「日本の経営者はITを恐れてばかり」−フォーブス ジャパンWEB編集長が語るこれからのITとの付き合い方
更新: 2020.10.05
近年急速にIT化が進むにつれ、経済構造も大きく変わり凄まじいスピードで企業は興亡を繰り返しています。そんな中、日本企業はITとどう向き合っていくべきなのでしょうか。
日本初の経済キャスターとして世界の名だたる著名人にインタビューし、現在はフォーブス ジャパンの副編集長 兼 WEB編集長をされている谷本有香さんにお話を伺いました。
プロフィール 谷本有香さん
フォーブス ジャパン副編集長 兼 WEB編集長。証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、2004年米国でMBAを取得。その後、日経CNBCキャスターに。2011年5月からは同社初の女性コメンテーター。同年10月からフリー。
これまで、トニー・ブレア元英首相、マイケル・サンデル ハーバード大教授、ジム・ロジャーズ氏、ハワード・シュルツ スターバックス会長兼CEO、スティーブ・ウォズニアック アップル共同創業者の独占インタビューをはじめ世界のVIPたちへのインタビューは1,000人を超える。
この記事の目次
25歳に会社が倒産。経済への“復讐心”が慎重だった自分を変えた
−−新卒で入社した証券会社でキャスターをされていますが、もともと興味があったのですか?
いえ、正直なところキャスターになりたかった訳ではなく、経済に関わる仕事がしたくて証券会社に入りました。
私は中学生から大学生の間にバブルの全盛期と崩壊を経験しました。株で儲けて一気に大金持ちになり、それを一気に失う親戚の様子を間近で見ていたので「人の生活を一変させる“経済”について知りたい」と思ったんです。そこでたまたま配属されたのが、キャスターでした。
−−そこで、キャスターとしての経験を積まれたのですね。
いいえ、実は私が25歳の時に不祥事で突然会社が倒産しました。とはいえ、当初はどこかの会社が買ってくれて、社名は変わっても仕事がなくなることはないだろうと誰もが思っていたんです。
しかし、実際には私含め何万もの社員が職を失いました。中には、周囲から「恥さらし」と言われ、引っ越しを迫られる人や学校でいじめられる子どもたちまでいたんです。
「たしかに悪いことはしたけれど、なぜ自分の仲間たちがこんな辛い仕打ちを受けなくてはいけないのか」と、私は憤りました。そして、その答えが経済にあるとわかった時、その道を極めることが私の使命だと、身勝手ながら感じたんです。
−−その後証券会社に転職されたのですか?
当時は証券不況だったので25歳でノースキルの私が入れる会社はありませんでした。そこで、当時はいなかった「経済キャスター」という肩書きでなら、唯一私にもできることがあるかもしれないと思ったんです。
もともとは石橋を叩いて割ってしまうような性格だったのですが、その時はもはや失うものも背負うものもなかったので、片っ端から企業に電話をかけて仕事を探しました。結果、フリーランスの経済キャスターとしてキャリアを再スタートできることになりました。
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オールドインダストリーこそITで世界にもう一度台頭できるチャンスを掴め
−−当時とは原因こそ違うものの、現在もテクノロジーの発達によりビジネス構造が簡単に変わり、大企業が簡単に潰れてしまう、ということが起こりやすいのではないかと考えています。
その通りで、ITリテラシーの高さが未来の勝敗の分水嶺になっていると思います。ITリテラシーに関しては、私は日本の現状に危機感を抱いています。経済の国際会議に出席していると欧米と日本の経営者に温度差を感じることが多いんです。
欧米の経営者は、ITについてものすごく勉強されている印象があります。たとえCSOと呼ばれるシステムのトップが別にいても、その人の言うことを自分の頭で理解しておきたいという気持ちが強いのでしょう。一方、日本の経営者は、CSOや若手に一任していたり、分からないからITに絡めた戦略は練らないという方が多い気がします。
また、欧米と日本ではITの活用の仕方にも違いがあります。日本ではコスト削減など、消極的な意味合いでITを活用することが多いですが、欧米の企業は売上100倍増など、プラスを生み出すためにITを使えないか考えています。
その結果が、「イノベーションを起こす欧米企業」と「小規模なプロジェクトにとどまる日系企業」という今の勝敗につながっているのではないでしょうか。
−−フォーブスのWEB編集長として、ご自身もITの世界に入って気付いたことはありますか?
既得権益であるテレビ業界にいてもITの脅威を感じてはいたのですが、我々はあえてそれを見ないことによって、自分の優位性を保とうとしてきたことに改めて気付かされました。
ただ、これまで日本を支えてきたオールドインダストリーがITを使いこなせるようになれば、世界にもう一度台頭できると私は考えています。
強さと資金力を持ったそのような企業こそ、ITで大きなチャンスを掴めるということを、これから日本の経営者の皆さんに伝えていきたいですね。
個人にとっても、テクノロジーを学ぶことは実利的
−−所謂オールドインダストリーからIT業界に入られた谷本さんですが、社会人がテクノロジーを学ぶ意義について教えて下さい。
まず、企業にとっては先ほど申し上げたとおり、ITを味方につけることで世界にもう一度台頭できるチャンスを生み出すのに必要不可欠な知識だと思います。また個人に関して言えば、プログラミングなどのスキルを学ばれるのは新しいキャリアを築く上でとても実利的ですね。
今はプログラミングを学んでフリーランスを目指す女性が多いと伺っていますが、女性の場合は特に、自分の目標をスケールダウンしてしまう人がとても多いので、目標からブレずに行動を起こせているのは素晴らしいことだと感じます。
個人的にも、フリーランスは自分が努力した分だけどんどん素敵な仕事に巡り会える素晴らしい働き方だと思っているので、興味のある方は、ぜひ一歩を踏み出してほしいと心から願っています。
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