農業×ITのパイオニアが考えるテックキャンプ研修の意義
更新: 2020.03.05
あなたは「農業」や「酪農」に対して、どのようなイメージがあるでしょう。なんとなく「テクノロジーとは縁遠い仕事」という印象を持ってはいないでしょうか。
近年、拡大を続けるビジネスの一つが、農業と先端技術を融合する「アグリテック」です。
IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)技術は、これまで「ベテランの勘」や「経験」に頼る部分も大きかった農業分野で、作業効率化や生産性の向上をもたらし始めています。
国内アグリテック・スタートアップで最も注目を集める企業の一つである株式会社ファームノートでは、社員研修に「テックキャンプ研修」を導入し、非エンジニアによるプログラミング学習を推進しています。
非エンジニアがプログラミングを学ぶことの意義とは何か。ファームノートにとって、「テックキャンプ研修」とはどういった位置づけのプログラムなのか。農業×ITの未来とはどのようなものか。
株式会社ファームノートホールディングス・管理統括マネージャーの志賀浩一郎さん、テックキャンプ研修受講生にして同社・経営企画の金子洋一郎さんにお話を伺いました。
<株式会社ファームノート 会社概要>
スマート農業ソリューションを提供するITベンチャー。「牧場を、手のひらに。」をビジョンに、クラウド型牛群管理システム「Farmnote」を開発・提供。センシング技術の開発や人工知能の活用にも取り組み、ITで農業の効率化や経営力向上への貢献を目指す。
この記事の目次
牛の管理をITで行う
――ファームノートとは、どのような事業を手掛けている会社なのでしょうか?
志賀:弊社は、「ITを使って、更に効率的で効果的な農業の実現と農家さまの経営力向上」をお手伝いしています。
例えば、牛の情報を端末で打ち込むとクラウド上に情報が集まり、スマートフォンやタブレットから気軽に個体情報を見ることができるプロダクトを提供しています。
このプロダクトの登場により、今まで農家さまがご自身の目で牛を見て、触れ、何か気が付いたことがあるとその度に事務所へ戻って台帳を付けていた時間のロスや負荷が大きく軽減されました。
――牛の情報は、紙に書いて管理するのが普通だったんですね。
志賀:その日の牛のコンディションや出産、投薬記録等の情報を紙の台帳というアナログ環境で管理をしていました。
それらをデジタル管理することにより、牛が目の前にいる状態で、その牛の情報をスマートフォンやタブレットで簡単に見ることが出来るようになります。
農家さまの生産性向上という観点からも、IT技術の取り込みは他業種同様に重要なテーマとなります。
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「Internet of Animals」をデバイスで推進
志賀:またファームノートにはFarmnote Colorというデバイスもあります。社内ではIoTならぬ、「IoA:Internet of Animals」という言い方をしています。
――牛のウェアラブルデバイスのような機器ですね。
志賀:筐体には重りと、加速度センサーが付いています。
牛の首に装着し、加速度センサーから取得した牛の行動データを、牛舎に設置した中継基地を経由してクラウドにアップします 。
クラウド上に集まった情報をAIで解析し、(解析結果をもとに)牛の状態を農家さまに通知するプロダクトです。
属人的な勘だけでなく、AIを活用
志賀:農家さまは、牛の発情兆候の検知に日々注意を払っています。例えば乳牛の場合、牛からお乳が出るようにするには、お腹に子牛が居ないといけません。
出産の為には、牛の発情兆候を適切に見つけ、人工受精させる必要があります。
牛にも個体差があるので発情兆候が分かりやすい牛と、そうでない牛がおり、正しく見分けるには長年の経験に基づく勘や知識が必要です。
しかし熟練の農家さまでさえ夜間や牧場から離れてしまうと、どうしても兆候を見落としてしまうこともありました。
AIで牛の状態を解析することにより、発情兆候に関する通知を受け取った農家さまは機会損失を減らし、人工授精の準備を進めることができるようになります。
発情兆候を見落としてしまった場合、それは農家さまの収益ロスに直結します。だからこそ、ITを活用して兆候検知の精度を上げることは重要となるのです。
マーケットもテクノロジーも理解する必要がある
――お二方の業務内容をお教えいただけますか?
志賀:私はバックオフィス担当で人事・総務・経理の統括をしています。
金子:私は経営企画を担当しており、全社的な事業計画や経営戦略の立案・取りまとめや日々の事業進捗管理を担当しています。
――金子さんは、今回、ファームノート様の社員としてテックキャンプの研修を受講されたお一人ですよね。
金子:経営企画の立場にいる人間としては、セールスやエンジニアとの日々のコミュニケーションが欠かせず、マーケットもテクノロジーも理解する必要があります。
「経営企画」という部署で働く私にとって、テクノロジーが理解できるテックキャンプの受講は重要な機会だったと思います。
志賀:エンジニアの採用、育成も大事ですが、同じように周辺部署の人間が、エンジニアときちんとコミュニケーションが取れることも非常に重要だと考えてます。
金子:テックキャンプの受講前は会議に参加しても、エンジニアの話はその場では理解できない部分も多く、会議で出てきた言葉を都度検索して、断片的について行くという感じでした。
ただ、それだと知識が頭の中で繋がっていかないんですよね。
テックキャンプを受講したことで、RubyとHTML、CSSの繋がりとWEBアプリケーションの構造を教えてもらうことができました。
――ご参考に、金子さんのテックキャンプ受講前のプログラミングスキルがどういうものだったか、お教えいただけますか?
金子:特定のアプリケーションソフトやWEBサービスを使う程度で、リテラシーは高くありませんでした。
――Rubyの存在は元々、知っていましたか?
金子:言葉だけですね。前職ではベンチャー支援の仕事をしていたので、エンジニア向けのイベントにも足を運ぶ機会がありました。
そういう場で「Ruby」という言葉を耳にしてはいましたが、「プログラミング言語の一つ」程度の理解しか持っていませんでした。
「出社しなくていいから、テックキャンプに行くように」
――短期間でかなり濃密な内容を学ばれたかと思います。どういう風に学習を進めていきましたか?
金子:私は書かないと頭が整理できないタイプなので、最初は一個一個理解しようとポイントを紙に書き出していました。
その調子でまずは一日半進めたのですが、思った以上に時間が掛かり「これでは終わらない!」と(笑)。
学ぶうちに「プログラミング学習は語学と同じ」だと感じたんです。とにかく「慣れるまで流すべき」だと。
型が身につくことで出来るようになるのでは、という自分なりの仮説を立て、そこからはスピード勝負で、ひたすらカリキュラムを回しました。
――「とにかく最後までやっちゃおう!」という感じだったんですね。
金子:受験勉強と同じで、一回目を消化した時点では断片的な知識が頭に残っている状態が、繰り返すことで知識が線として繋がってくる感覚はプログラミング学習にも確かにありました。
志賀:金子には「一週間出社しなくていいから、とにかくテックキャンプに行くように」と言っていました(笑)。
社会人になってから、一つのことをこれだけ集中して学ぶという機会は中々作れないものですよね。そういう意味では、テックキャンプでの学習というのは非常に有意義なものだと思います。
知識が繋がる瞬間にやりがいがある
――受講期間中、一日何時間勉強していましたか?
金子:休憩も入れるようにしていましたが、大体10時間はやってました。さすがに集中力が切れるので18時に上がり、その後はカフェや自宅に移動して勉強をしました。
――辛くなったり、「モチベーションが続かないなあ」と感じる瞬間はありませんでしたか?
金子:書いてある内容が分からずに一周目に通り過ぎた箇所が、二周目にはしっかりと知識が繋がる瞬間にやりがいを感じ、モチベーションを維持していました。
テックキャンプのよかったところは、カリキュラムの難しい箇所には「ここはこういうものだと割り切って、今はとりあえず先に進んでください」というガイダンスが書いてあるところです。
実際にその場ではわからなくても後でわかるようにカリキュラムがしっかりと組まれており、初心者でも進めやすかったです。
また、最後に内容をダイジェスト動画で振り返ることができた点も非常に良かったです。
映像で学ぶというのは、昔ながらの本での学習ではできないことですよね。
――メンターによるサポートは満足いくものでしたか?
金子:メンターには成熟度が高い方と、少し前まで私と同じようにテックキャンプで学び、いまはメンターとして成長されている過程の方がいらっしゃいますよね。
後者のメンターの良いところは少し前まで私と似たようなレベルだった方なので、こちらがわからない部分をうまく言葉に説明できなくても、ニュアンスから察してピンポイントで答えてくれました。
まさに、かゆいところに手が届く感じです。
呼んだら人がすぐに来てくれる環境というのも、シンプルにありがたかったです。
「アグリテック」の登場
――「農業×IT」という分野で事業を展開する企業は、まだ少ないイメージがありますが?
金子:農業×ITにチャレンジしている会社というのは、実は増えてきています。ファームノートは「酪農・畜産」というドメインで事業を展開していますが、稲作や畑作といった分野で勝負をしている企業もあります。
志賀:確かにビジネスチャンスではありますが、競争が激しいのも事実です。市場の競争に勝つ為にも、優秀なエンジニアの採用は重要な課題でもあります。
――いま、必要としているエンジニアとはどういう存在ですか?
志賀:正直、エンジニアは全般的に必要としていますが、特にデータサイエンティストですね。集めた牛の情報を解析し、競争優位性に結び付けていくことができるような人材が必要です。こういったスキルを持つ方がもともと少ないうえに、AI技術の進歩とともに、IT業界でのニーズも非常に高くなっていて、採用には苦労しています。尽力していきたい部分です。
常にフォーキャストを持つ
――ファームノート様にとって、今回の研修はどういう価値があったと思われますか?
金子:弊社では、技術優位性を非常に重要視しています。
技術をコアに置き、その上で「酪農・畜産」というドメインで勝負をしていますが、今採用している技術の優位性はいつかは失われてしまうものと考えています。
そのため、その技術優位性はいつ失われるのか?次に優位性をもつ技術は何なのか?という点に関して、常にフォーキャストを持っているべきと考えています。
弊社ではこの部分を代表やCTOが中心になって担ってますが、私もキャッチアップしていかなくてはなりません。
だからこそ、今回テックキャンプを受講し、テクノロジーの入口に立てたことは大変有意義だったと考えています。
――貴重なお話、ありがとうございました。